「ワカメを食べると髪が生える」は本当か?
よくある説(俗説)
ワカメを食べると髪が生える・増える
黒くてつやつやしたワカメは髪の毛に似ており、食べると髪が生えてくる・増えると昔から言われている。育毛効果を期待してワカメや海藻を積極的に食べている人も少なくない。
検証
「ワカメを食べると髪が生える」という主張を支持する科学的根拠は現時点では存在しない。ワカメにはヨウ素・食物繊維・フコイダン・鉄・カルシウムなどが含まれており、これらの一部は毛髪の健康維持に必要な栄養素でもある。しかし「健康維持に必要な栄養素を含む」ことと「食べれば髪が生える」ことは全く別の話だ。毛髪の成長は毛包の活性、男性ホルモン(DHT)の影響、血行、遺伝などが複合的に関わっており、ワカメを食べることでこれらを直接改善するメカニズムは確認されていない。海藻に含まれるフコイダンについては、試験管・細胞レベルで毛乳頭細胞の増殖を促進するという研究結果が報告されているが、実際に食べた場合に消化・吸収を経て毛包に届き発毛効果を発揮するかどうかは別問題であり、ヒトを対象とした信頼性の高い臨床試験での有効性は確認されていない。日本皮膚科学会のAGA(男性型脱毛症)診療ガイドラインでも、海藻を含む特定の食品を推奨する記述はなく、食事療法の有効性は認められていない。また、ワカメを大量に食べることで起こるヨウ素の過剰摂取は、かえって甲状腺機能の異常を引き起こすリスクがある。
実際の有力説
ワカメを食べることで直接髪が生えたり増えたりするという科学的根拠はない。ただし、極度の栄養不足は脱毛を引き起こすことがあるため、バランスの良い食事で必要な栄養素を確保することは毛髪の健康維持の土台となる。「ワカメが特別に効く」ではなく「偏食を避ける」という理解が正確だ。
なぜ広まったか
最も広く知られる説は「見た目の連想」だ。黒くて細長いワカメが黒髪に似ていることから、「食べると髪に良い」という類感呪術的な発想が生まれたと考えられる。古くからの民間信仰として定着し、それがテレビや書籍で繰り返し紹介されることで「常識」として広まった。海藻に栄養素が含まれることも事実であるため、完全な嘘とは言いきれないという雰囲気が信憑性を維持させた。
見分け方
「見た目が似ているから体の同じ部位に効く」という発想(類感呪術)は民間療法に頻繁に登場する。クルミは脳に良い、トマトは心臓に良いなど同様のパターンがある。食品に有効成分が含まれていても、消化・吸収・代謝のプロセスを経て狙った部位に届き、期待する作用を発揮するかどうかは別問題だ。「含まれている」と「効く」の間には大きな飛躍があることを意識するとよい。
出典
- 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版— 日本皮膚科学会
- Fucoidan promotes hair growth by enhancing the proliferation and migration of dermal papilla cells— Liang et al. / Journal of Functional Foods (2015)
- ヨウ素の過剰摂取について— 厚生労働省