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一部誤り

「大人になると時間が短く感じるのは脳の処理スピードが落ちるから」は本当か?

科学・医学科学・医学心理学

よくある説(俗説)

大人になると1日や1年が短く感じるのは、脳の処理スピードが落ちているから

年をとるほど時間が過ぎるのが早く感じる。その理由として「脳の処理速度が年とともに低下し、刺激をキャッチする能力が鈍くなるために時間が速く感じられる」と説明されることがある。

検証

「脳の処理速度の低下」は時間知覚の加速に関わる要因のひとつではあるが、それだけが原因とは言えない。デューク大学の研究者らは、加齢により目の動きが遅くなり神経信号の伝達も鈍化するため、1秒間に脳が処理できる「コマ数」が減り時間が速く感じられるという仮説を提唱した。しかしこの説は有力な仮説のひとつに過ぎず、同程度に支持されている別の説が複数存在する。代表的なのは、19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネが提唱した「ジャネの法則」で、人生のある期間の心理的な長さは年齢に反比例するという比例論だ。また記憶の密度理論も広く研究されており、子ども時代は新鮮な体験が多く記憶に刻まれるため時間が長く感じられる一方、大人は日常がルーティン化して記憶に残る出来事が減り、時間が圧縮されて感じられるという説明が心理学的研究で支持されている。さらにドーパミン量の変化が時間感覚に影響するという説もある。

実際の有力説

大人になると時間が短く感じる現象は実在するが、その原因は「脳の処理速度の低下」のみではなく、複数の理論が競合している。処理速度の低下が一因である可能性は否定できないが、新鮮な体験・記憶の密度の変化や人生の比例的な時間感覚など、他のメカニズムとの組み合わせで説明されることが多く、単一の原因として断言するのは現時点では難しい。

なぜ広まったか

「処理速度が落ちる→感知するコマ数が減る→時間が速い」という説明は直感的な因果関係として理解しやすく、広まりやすかった。加齢と「脳の衰え」を結びつけるイメージとも合致するため、他の説よりも覚えやすく引用されやすい。

見分け方

「○○な感覚になるのは、△△だから」という心理・認知の話は、複数の学説が並立していることが多い。「それが唯一の理由として確立されているか」と「他の有力な説は何か」を調べると、単純化の程度が見えやすい。

出典

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