一部誤り
「心拍数が上がると恋愛感情が生まれやすい」は本当か?
よくある説(俗説)
心拍数が上がると恋愛感情が生まれやすい
吊り橋、遊園地、ホラー映画、運動後などで心拍数が上がると、そのドキドキを相手への恋愛感情だと勘違いしやすい。いわゆる『吊り橋効果』として、恋愛テクニックのように紹介されることが多い。
検証
この話には心理学研究に基づく事実の核がある。Dutton と Aron の有名な吊り橋研究では、不安を誘う橋を渡った男性の方が、女性調査者への接触行動や性的な想像を示しやすかった。White らの研究でも、運動などで生じた覚醒が、魅力的な相手への好意を強める結果が報告されている。ただし、これは『心拍数が上がれば誰でも恋に落ちる』という意味ではない。相手の魅力、状況の解釈、覚醒の原因が自覚されているかなどに左右される。
実際の有力説
より正確には、恐怖や運動で生じた生理的覚醒が、状況によっては相手への魅力として解釈され、好意を強めることがある。これは『覚醒の誤帰属』と呼ばれる。ただし恋愛感情は心拍数だけで作られるものではなく、認知的評価、相手との相性、既存の好意、文脈が関わる。心拍上昇は恋愛感情の原因というより、特定条件で感情解釈を揺らす要因の一つである。
なぜ広まったか
『ドキドキ=恋』という説明が直感的で、吊り橋効果という名前も覚えやすい。恋愛テクニックとして使いやすく、複雑な実験条件や再現性の限界が省かれたまま広まりやすい。
見分け方
心理学の俗説では、実験で確認された狭い条件と日常場面への応用を分けて読む。『効果があることがある』が『誰にでも使える方法』へ変換されていないか、元研究の対象者、状況、測定された行動を確認すると見分けやすい。
出典
- Some evidence for heightened sexual attraction under conditions of high anxiety— Donald G. Dutton, Arthur P. Aron / CiNii Research
- Passionate love and the misattribution of arousal— Gregory L. White, Sanford Fishbein, Jeffrey Rutstein
- Cognitive, social, and physiological determinants of emotional state— Stanley Schachter, Jerome E. Singer / PubMed
- Misattribution of arousal and attraction: Effects of salience of explanations for arousal— Gregory L. White, Thomas D. Kight