「髪の毛は体内の余った血でできている」は本当か?
よくある説(俗説)
髪の毛は体内の余った血でできている
髪の毛は体の中を巡った血液の余りが変化してできたものだという話がある。貧血になると髪が抜けやすい・髪が細くなるという経験とも結びつき、血と髪が深く関係しているという説明として語られることがある。
検証
現代科学では、髪の毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質で、全体の約80〜95%を占める。ケラチンはシステインをはじめとする複数のアミノ酸から合成されるタンパク質であり、血液そのものではない。頭皮内の毛包(もうほう)には毛乳頭と呼ばれる毛細血管が豊富な組織があり、血液がアミノ酸・ビタミン・ミネラルなどの原料を毛母細胞に届ける。毛母細胞はそれらを材料にケラチンを合成し、細胞分裂しながら毛幹を形成する。つまり「血液が髪の原料を運ぶ」ことは正しいが、「髪は血でできている」は成分として誤りだ。この説の源流は漢方(中医学)の概念にある。中医学では髪を「血余(けつよ)」と呼び、血(栄養・潤いを全身に巡らせるもの)が十分に行き渡った余りが頭髪として現れる、という比喩的・機能的な理解を示している。この「血余」は現代生化学の意味で「血液の余り」を指しているわけではなく、血の充実が髪の健康を支えるという関係性を表現したものだ。
実際の有力説
髪はケラチンタンパク質でできており、血液成分(赤血球・ヘモグロビンなど)ではない。ただし血流が髪の原料を毛包に運ぶため、血の状態が髪の健康に影響するのは事実。貧血や栄養不足で髪が細くなる・抜ける現象は実際に起こる。「血の余りでできている」は比喩的・伝統医学的な説明が字義どおりに受け取られたものと考えられる。
なぜ広まったか
漢方の「血余(けつよ)」という表現が「余った血から髪ができる」と文字どおりに解釈されて広まった可能性がある。また貧血と脱毛の関係は実生活でも体験されやすく、「血と髪がつながっている」という認識を強化した。科学的な仕組みが広く知られないまま、わかりやすい比喩が事実として定着した。
見分け方
伝統医学の概念は比喩的・機能的な説明を多く含む。「○○でできている」という物質的な主張は、現代科学の成分・組成の観点から確認し直すと、伝統的表現が字義どおり正しいかどうかを判断しやすい。
出典
- 髪は血の余り…?— 漢方の一陽館薬局
- 髪の毛の主成分「ケラチン」と毛根の仕組み— チャップアップラボ
- 髪の主成分ケラチンとは?ケラチンの役割と重要性— リーブ21